北朝鮮が日本人拉致の事実を認めた二〇〇二年九月の日朝首脳会談から三年が経過した。同会談で金正日総書記が拉致を認めて謝罪し、蓮池薫・祐木子さん夫妻、地村保志・富貴恵さん夫妻、曽我ひとみさんら五人の帰国が実現した。また、〇四年五月の第二回首脳会談の後、その五人の家族が順次帰国した。しかし、「八人死亡」と「二人未入国」という北朝鮮側の調査結果を裏付ける資料は、その後まったく提出されず、残された拉致被害者の消息は今なお不明のままである。 唯一、日本の再調査要求に応える形で提供してきた横田めぐみさんの「遺骨」も、警察庁科学警察研究所や帝京大学法医学教室でDNA鑑定をした結果、〇四年一二月、別人のものと判明した。この「遺骨」は、めぐみさんの夫なる人物がいったん土葬した遺体を二年半後に掘り出し、火葬に付して骨を保管していた、といういわくつきの代物だった。 日本政府は、ニセの骨で事実を隠蔽しようとしたとして、北朝鮮の態度に抗議し、約束済みの食糧支援(一二・五万トン)の実施を凍結するとともに、今後は「迅速かつ誠意ある対応がない場合は厳しい対応をとる」と、経済制裁の可能性を伝えた。 これに対して北朝鮮は、翌月、朝鮮中央通信を通じて「日本の遺骨鑑定結果は、捏造である。日本は拉致問題を過去の清算を回避するための盾とし、問題解決を引き延ばしている」(朝日新聞〇五年一月八日付より)という内容の備忘録を発表し、日本を非難した。
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