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2006年版
[拉致問題についての基礎知識]
[基礎知識]日本はなぜ拉致被害者を取り戻せないのか?


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ニセ遺骨問題の波紋
 北朝鮮が日本人拉致の事実を認めた二〇〇二年九月の日朝首脳会談から三年が経過した。同会談で金正日総書記が拉致を認めて謝罪し、蓮池薫・祐木子さん夫妻、地村保志・富貴恵さん夫妻、曽我ひとみさんら五人の帰国が実現した。また、〇四年五月の第二回首脳会談の後、その五人の家族が順次帰国した。しかし、「八人死亡」と「二人未入国」という北朝鮮側の調査結果を裏付ける資料は、その後まったく提出されず、残された拉致被害者の消息は今なお不明のままである。
 唯一、日本の再調査要求に応える形で提供してきた横田めぐみさんの「遺骨」も、警察庁科学警察研究所や帝京大学法医学教室でDNA鑑定をした結果、〇四年一二月、別人のものと判明した。この「遺骨」は、めぐみさんの夫なる人物がいったん土葬した遺体を二年半後に掘り出し、火葬に付して骨を保管していた、といういわくつきの代物だった。
 日本政府は、ニセの骨で事実を隠蔽しようとしたとして、北朝鮮の態度に抗議し、約束済みの食糧支援(一二・五万トン)の実施を凍結するとともに、今後は「迅速かつ誠意ある対応がない場合は厳しい対応をとる」と、経済制裁の可能性を伝えた。
 これに対して北朝鮮は、翌月、朝鮮中央通信を通じて「日本の遺骨鑑定結果は、捏造である。日本は拉致問題を過去の清算を回避するための盾とし、問題解決を引き延ばしている」(朝日新聞〇五年一月八日付より)という内容の備忘録を発表し、日本を非難した。


政府のいう「圧力」とは
 こうした北朝鮮の態度に、日本国内では経済制裁を求める世論が高まっている。政府は「対話と圧力」を基本として、情勢次第では経済制裁に踏み切る可能性を米国や韓国に伝えたが、両国は「中断している六者協議への不参加の口実を北朝鮮に与える」と制裁発動には反対の意向を示した。
 日本政府の準備した制裁案は、「経済制裁に準じた措置」と「経済制裁」の二段階に分かれている。前者は(1)食糧支援の凍結、(2)北朝鮮産アサリの原産地表示の徹底化、(3)北朝鮮船舶の保険加入の義務づけ、(4)朝銀系信組の監督強化、(5)脱北者支援、などを想定したもので、脱北者支援については米国のような北朝鮮人権法案が必要となる。
 これらの措置によってもなお効果がない場合は、いよいよ後者の「経済制裁」に踏み切る。その内容は段階的に(1)北朝鮮への送金等の報告義務を厳しくする、(2)送金禁止、(3)品目を限った輸入禁止、(4)貿易の全面停止、(5)北朝鮮船舶の入港禁止などである。
 これらの選択肢を用意しながら、実際に発動したのは、食糧支援の凍結、アサリの原産地表示の徹底化、北朝鮮船舶の保険加入の義務化という三つの措置だけである。米韓の反対の前に、日本単独の経済制裁には躊躇しているのが現状だ。この問題について、東京基督教大学の西岡力教授は、制裁の早期発動を求める立場からこう力説している。
 〈日本はまず、早急に単独でも制裁を発動すべきだ。その上で、六者協議では北朝鮮側に生存者の帰国実現と拉致実行犯の引き渡しを迫り、それが聞き入れられない場合は、国連安保理などを通じて国際協調による制裁も求めていく断固たる姿勢を示すしかない〉(産経新聞〇五年七月二三日付)


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論 点 拉致被害の実態とは 2006年版

私の主張
拉致被害者の数一〇〇人以上。すべての人を救出する以外解決の道はない
荒木和博(特定失踪者問題調査会代表、拓殖大学海外事情研究所教授)


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