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議論に勝つ常識
2006年版
[テロについての基礎知識]
[基礎知識]日本のテロ対策はどこまで進んでいるか?


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ロンドン同時爆破テロの衝撃
 二〇〇五年七月七日に英国・ロンドンで発生した同時自爆テロは、死傷者七〇〇人以上を出す大惨事となった。狙われたのは市内中心部の、通勤・通学時間帯の地下鉄とバス。〇一年の米国同時多発テロ、〇四年のスペイン列車爆破テロと同様、一般市民が標的となった。しかも、同国のグレンイーグルスでは主要国首脳会議(サミット)が開幕したばかりだっただけに、この衝撃の大きさは計り知れない。
 さらに二週間後の二一日には、ふたたび同様の手口で四件の同時爆破・爆破未遂事件が発生。死傷者は出なかったが、従来以上に厳重な警戒態勢を敷いていた中での事件だけに、動揺が広がった。
 ただ、七日の実行犯(全員死亡)は六日後に、二一日の実行犯(全員逃亡)は翌日にそれぞれ割り出され、後者は月内に全員逮捕された。その決め手となったのが監視カメラの映像だ。英国には、全土に四〇〇万台以上、地下鉄の各駅だけで六〇〇〇台にも及ぶ監視カメラが設置されている。そのテープに、実行犯の行動が映し出されていたのである。
 その一方で、テロとは無関係のブラジル人が、テロ対策のための武装警察部隊に誤って射殺されるという事件も起きた。同部隊は、自爆テロリストの可能性が高い人物と遭遇した場合、自爆阻止のために頭部を狙撃して即死させるよう指示を受けていた。事実関係が判明した後、当局は謝罪したが、今後も狙撃の方針は変えないと言明している。


日本も標的になる?
 ロンドンのみならず、テロは各地で頻発している。同じ七月にはエジプトのリゾート地・シャルムシェイクでも同時自爆テロが発生し、八八人が犠牲になった。また一〇月のインドネシア・バリ島での同時自爆テロでは、自爆犯三人を含む二三人が死亡し(うち一名は日本人)、一二〇人以上が負傷した(うち四人は日本人)。同国では、これで四年連続して大規模テロが起きたことになる。
 いずれのケースも、アルカイダやジェマ・イスラミアといったイスラム過激派による国際テロ組織の関与が取り沙汰されているが、その関与の度合いや組織の実態等は不明だ。ただ、こうしたテロが日本で起こらないという保証はない。社会技術研究開発センター研究員の古川勝久氏は、〈(国際テロ組織は)多数の小規模グループからなる「フランチャイズ」のように、イデオロギーのみでつながる運動体に変化〉したとし、〈昨年アルカイダが出した声明の中で日本が攻撃対象国として明確に認識されている以上、テロ攻撃は必ず来るとの前提で備えるべきだ。事実、日本には新幹線や高層ビルなど、英国よりもはるかに数多くの潜在的テロ攻撃対象がある。新生の過激派メンバーであれば、欧州などから日本へ探知されずに容易に渡航できよう〉(朝日新聞〇五年八月二〇日付)と警告を発している。


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論 点 テロから都市を守れるか 2006年版

私の主張
予防こそ最高の危機管理である――日本版CIAの創設を急げ
佐々淳行(初代内閣安全保障室長)
テロ対策に名を借りた過剰防衛が未曾有の監視社会を現出させる
斎藤貴男(ジャーナリスト)


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