著作権法が、何を通じて何を目指すかは、第一条の「目的」に掲げられている。 法はまず、著作者の権利とこれに隣接する権利を定め、その保護を図る。加えて、著作物の公正な利用にも留意する。著作者の権利保護と、著作物を利用する側への配慮に共に意義を認め、両者をバランスさせて著作権法が目指すのは、「文化の発展に寄与すること」である。 作品を生みだした人に権利を認めて保護すれば、著作者には作品で儲ける可能性が開ける。生活に追われることなく創作に専念することで、よりすぐれた作品を生み出すという、法の目的にかなった循環の形成を期待できる。ただし、作者が生物的な死を迎えれば、創作のエンジンもそこで、永遠にとまる。そうなった時点で考慮に入れるべきもう一つの要素を、著作権制度は想定している。 人は過去の文化的な資産を糧とし、自らを育んではじめて、創作に至りうる。すぐれた作品を残した者もかつては、先人の用意した文化のゆりかごに抱かれた赤子だったはずだ。古い作品はまた、換骨奪胎されて、新しい作品として生まれ変わる可能性を秘めている。 ならば、作者の死によって、権利の保護が創作への励ましとならなくなった段階で、創作の揺りかごである文化の大河から生まれた作品を、もう一度流れに戻し、誰もがたやすく作品に触れられるよう仕組んでおこう。作者の死後五〇年を経た段階で保護を打ち切り、以降は自由に複製を作り、インターネットでも公開できるようにしようとする著作権法の規定には、こうした期待がこめられている。
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